これは倉富さんが5月28日に投稿された「剪定鋏の殺菌」へのコメントですが、写真があるので新しいページにさせてもらいます。剪定鋏から伝染したと思われるバラの根頭癌腫病の症例です。
左の写真には4個の癌腫が見えています。黒くて大きいのは発症して半年以上が経過していると思われます。根頭癌腫病は根にだけ発生するのではないことに注目。剪定鋏に付着した菌よっても感染します。
根頭癌腫病については以下を参照。
● 根頭がんしゅ病|バラ類(バラ科)|病害情報|タキイ種苗株式会社
● バラの根頭癌腫病 - 2|ローズそらシド(私のノート)
病原菌は宿主細胞のDNAを書き換え、植物ホルモンのオーキシンとサイトカイニンを大量に生合成させるとともに、自分だけが利用できる栄養源としてオパインという物質をバラに作らせるという「遺伝子組換え」をします。その結果があの「癌腫」です。*遺伝子組換え作物は(主に)この病原菌を利用しています。
病原菌は鞭毛を持っていて水中を泳動することができ、根の傷口などから分泌される「アセトシリンゴン」というフェノール系物質によって誘引され宿主に感染します。宿主も硬い表皮や細胞壁などで防御しているのですが、剪定などによる傷口があると防御力が弱まります。元肥の投入時にスコップで根を切るのも根頭癌腫病の予防という観点からすると怖いことですが、その時期は地温が低いので菌も不活発。今の時期の中耕で根を傷つければ、これは怖い。病原菌はどこにでもいるみたいです。
ただし、この遺伝子組換えは複雑なプロセスを経るので、名古屋大学・武田穣教授によれば、実験室レベルでの感染率は数万分の一程度らしいです。病原菌はどこにでもいるが、簡単に発症するわけでもないようですね。だからつい油断する😅
剪定鋏の殺菌・消毒は、感染を拡大しないためのものです。病原菌の死滅温度は51℃だそうなので、熱処理も効果的と思われます。商品名「オスバンS」はベンザルコニウム塩化物液で、これは医療機関や食品工場などで使われています。ドラッグストアでは常備しているはずです。600㎖で800円程度。
剪定する株を変えるごとに、この希釈液に鋏を数秒間漬けるか、希釈液をハンドスプレーに入れておいて鋏に吹き付けます。濡れたままの鋏でもバラには害はありません。
衛藤さん、「保菌箱」? 60℃以上なら「殺菌箱」でしょうか😅